不動産を売るときの諸費用はいくらかかる?
不動産を売却するとき、忘れてはならないのが諸費用です。一般的に知られている「仲介手数料」のほかにも、さまざまな費用がかかります。税金や法的手続き、専門家へ支払う費用など多岐にわたります。しっかり諸費用をチェックし、計画的な売却準備を進めましょう。
諸費用の種類と金額
不動産の売却では、仲介手数料をはじめ、主に六つの諸費用が必要です。売却額からこれら諸費用を差し引いたものが、最終的な売却利益となります。そのため、諸費用を忘れていると資金計画に大きな狂いが生じてしまいます。そこでまずは、それぞれの諸費用がどういうもので、いくらくらい必要なのかを把握しておきましょう。
1. 仲介手数料
「仲介手数料」は、不動産会社に売却を依頼し、売買契約が成立した場合に支払う成果報酬です。金額は宅地建物取引業法で以下のように上限原則が決められています。
〈仲介手数料率の上限原則〉
・取引額のうち200万円以下の部分×5%+消費税
・取引額のうち200万円超~400万円以下の部分×4%+消費税
・取引額のうち400万円超の部分×3%+消費税
このように価格帯別に料率が異なるのが特徴です。ただしこれでは計算が大変ですから、取引額が800万円を超える場合は以下のような速算式が用いられます。
取引額×3%+6万円+消費税
不動産会社はこの上限を超える仲介手数料を請求できません。ただし、これより安くする分には自由です。不動産会社によって手数料が違うことがあるのはこのためです。覚えておきましょう。また800万円以下の取引額については、一律30万円+消費税の仲介手数料を設定できる特例があります。ただし上記の上限原則を超えた仲介手数料を設定する場合は、不動産会社は依頼者への説明と合意の取り付けが必須となるので、これも覚えておきましょう。
2. 印紙税
「印紙税」は、不動産売買契約書に貼付する印紙の代金です。郵便局などで収入印紙を購入し、売買契約書に貼付することで納付します。印紙は契約書ごとに貼付するため、契約書を買主・売主で二通作る場合は、単純に二倍の印紙税がかかります。
もしも印紙の貼付を忘れたり、怠ったりすると「過怠税」が課される可能性があります。これは通常の印紙税額の三倍相当にもなるため、くれぐれも印紙を貼り忘れないよう注意してください。
印紙税は、売買契約書の金額によって、以下のように税額が定められています。
3. 抵当権抹消登記にかかる費用(登録免許税+司法書士への依頼料)
売却する不動産に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消登記にかかる「登録免許税」が必要です。この抵当権抹消登記は売主が行うもので、費用は以下のようになります。
抵当権抹消登記費用(登録免許税)
=不動産一個につき1,000円+代理人依頼手数料(司法書士依頼手数料)
「不動産一個につき1,000円」なので、建物+土地をセットで売却するときは不動産二つ分としてカウントされ、2,000円が必要です。また、司法書士への依頼手数料は依頼する司法書士事務所の料金体系によります。一般的には、所有権移転登記として3万円~5万円を設定している事務所が多いようです。事案ごと、依頼先によって費用に幅が出るので、正式に依頼する前に必ず確認しましょう。
4. 不動産譲渡所得税
仮に不動産の売却価格が購入価格よりも大きかったときは、差額が「譲渡所得」とみなされます。これに対する税が「不動産譲渡所得税」です。不動産譲渡所得税は、居住用か非居住用か、また不動産を所有していた期間の長さによって変動します。不動産譲渡所税とは、実際には「所得税」と「住民税」として納付するもので、税率は以下のようになります。
〈居住用の場合〉
・所有期間5年以下:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
・所有期間5年超:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
・所有期間10年超所有軽減税率の特例:課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%・住民税4%)、課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%)
〈非居住用の場合〉
・所有期間5年以下:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
・所有期間5年超:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
・所有期間10年超所有軽減税率の特例:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
このように、居住用でなおかつ5年超所有していた不動産は税率が優遇されています。
5. 測量費用
売却する不動産に土地が含まれるとき、測量によって土地の面積・境界線・権利関係を明確にする必要があります。これは、登記されている情報が古く、現況を正確に表してないことがあるためです。測量費用の相場は、土地の広さや測量のやり方によって変わります。
〈一般的な測量(官民査定省略の現況測量費)〉
・土地面積30~100坪:35~50万円
・土地面積100~200坪:80万~150万円
・土地面積200~1000坪:100~200万円
〈官民立ち合いありの確定測量〉
・土地面積30~100坪:55~80万円
これらはあくまでも目安ですから、個々の場合でかなり差が出ます。依頼する際は、必ず事前に見積もりを取りましょう。
6. 司法書士への報酬(取引立会料)
不動産の売買では、司法書士立会いのもと、金融機関の一室で売買代金の決済や権利関係の手続きが行われます。このとき司法書士へ支払う手数料が、取引立会料です。不動産取引の立会いは、2万円程度が相場のようですが、事務所ごとに幅があるので事前に確認しましょう。
実際の諸費用はいくらか、事例で計算
ここまでで不動産の売却に際して主に発生する六つの諸費用について、概ねの内容をご理解いただいたかと思います。それでは次に、これら諸費用が実際にはどれくらいの金額になるのかを見ていきましょう。
それぞれの費用について、上記の内容をもとに事例を仮定して諸費用を算出してみます。仮に土地(30坪)+建物を合計取引額3,000万円(税抜)で売却したときに、各諸費用および合計金額はいくらになるのでしょうか。下記をご覧ください。なお、この事例においては売却益は出ておらず、ゆえに譲渡所得税は発生しないものとします(売却益が出た場合は譲渡所得税が課されますが、物件ごとの状況によって税率が異なるほか控除規定の適用要件も異なりますので、別途確認してください)。
〈取引額3,000万円の場合〉
1. 仲介手数料:取引額×3%+6万円+消費税=105万6,000円
2. 印紙税(2通):2万円×2=4万円
3. 抵当権抹消登記費用:2,000円(登録免許税)+4万円(司法書士依頼手数料)
4. 不動産譲渡所得税:なし
5. 測量費用:35万円
6. 取引立会料:2万円
合計…150万8,000円
あくまで目安ですが、この場合150万円を超える費用がかかることがわかりました。取引額の5%に相当する額ですから、資金計画に与えるインパクトは無視できませんよね。こういった諸費用は、必ず事前に計算しておくことをおすすめします。
引越しや仮住まい費用も忘れずに
住まいを売却するのなら、住み替えによって引越しが必要になります。現住居を売却してから新居に引っ越すまでにタイムラグがある場合は仮住まいが必要で、その費用もかさみます。上記で計算した諸費用だけでなく、こういった住み替えにかかる費用も忘れずに計上しましょう。
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