不動産投資のリスクを減らす分散投資とは

紙幣束から複数の物件に矢印が向く様子を表したイラスト
投資にはリスクがつきものですが、投資家としてはできるだけ低くしたいですよね。その投資リスクを低下させる手法の一つに「分散投資」があります。では、不動産投資における「分散投資」とはどのようなものでしょうか。その具体的な手法や効果を見ていきましょう。

投資リスクとは何か、なぜ分散投資するのか

そもそも投資においてのリスクとは何でしょうか。それは基本的に「価格の変動」だと言えます。例えば株式に投資していたとして、株価が値下がりして投資額を下回ったら損をするわけです。簡単に言えばこれが投資のリスクです。一方で、当然価格は上向きに変動することがあり、投資額を超えた値上がりをすれば、その分資産が増えて得をすることになります。これがリターンです。

 

どの投資対象にも必ずリスクとリターンがあります。ただし、投資対象によってリスクとリターンの幅や可能性が違います。そのことを表すのに「ハイリスク・ハイリターン」とか「ローリスク・ローリターン」などという言葉がよく使われます。投資をする際に、「ハイリスク」は避けたいというのは当たり前の考えですし、できるだけリスクそのものを抑えたいとも思うものです。

 

「分散投資」とは、投資に必ずついて回るこのリスクを低減させるための手法です。一つの投資対象に必ずはらむリスクを、資金を分けて複数の投資を行うことで回避しようというわけです。ただし、分散させるといってもただただいろいろな商品に投資すればいいというものではありません。適切な投資対象を選ばなければ、分散投資のリスク低減効果は十分に得られませんし、得られるはずのリターンを逃してしまうことにもなってしまいます。そうならないためには、投資対象の特徴を知り、回避すべきリスク、得るべきリターンを理解した上で、分散投資を考えることが必要です。

不動産投資での分散投資の仕方

人物の周りに紙幣が配置されているイラスト

不動産投資のうち、特に現物不動産への投資は高額な資金を必要とするので、失敗したときの損失が大きいと言えます。ではどのように分散すれば、不動産投資でのリスクが低減できるのでしょうか。主な分散投資の仕方を見ていきましょう。

 

1.間取り・入居者属性、物件種別での分散

例えば、ワンルームや1DKなどの単身者向けの物件に投資する場合、入居候補者の属性として学生が想定されます。そこで近隣に大学や専門学校がある地域の住戸を購入、賃貸経営を始めましたが、学校が生徒数の変動を理由に移転してしまいました。すると現入居者は退去、次の借り手もなかなか見つからない状況になってしまいました。これは需要の変化による空室リスクと言えます。

 

このリスクを回避するために、二人暮らし向けの2LDKやファミリー向けの3LDK以上の物件を並行して投資運用していれば、学校の移転による全面的なリスクは低減できることになります。

 

また、もともと学生や単身者は入居期間が短い可能性があります。専門学校は2年程度で卒業になりますし、大学でも学年が上がるとキャンパスが変わることがあります。入居者が入れ替わると、その都度ハウスクリーニングやクロスの張替え、鍵交換などを行う必要があるので、費用がかかります。その期間が短いほど費用は増すので、これもリスクでしょう。

 

一方、ファミリー層は、いずれ持ち家を買うという展望があるとしても、転居にはまとまった費用が必要なので、それほど短期間で住み替えをしないという一般的な特徴があります。その点でも単身者向けの空室リスクを補っていると言えます。

 

逆の視点で見ると、学生が多い街では単身者向けの住居は借り手がつきやすいですが、ファミリー向けは募集期間が長くなるかもしれないという反対のリスクが考えられるので、双方がリスクヘッジし合っているということも言えます。

 

さらに、居住用物件よりもリターン幅は少ないですが、家賃滞納リスクを負わない(正確には料金滞納リスクはあるが、貸主から即時退去通告・契約解除ができる)駐車場など、異なる物件種別への投資も分散対象として考えられます。

 

2.エリアの分散

駅からの近さや繁華街に近接している便利さなど、エリア特性による賃貸需要の高さに期待して投資をしたとします。しかし、別の近隣の街が再開発され、人の流れがそちらに移ってしまったとしたら、投資物件の賃貸需要は落ち込むことになるでしょう。これはエリアを重視して投資することのリスクです(前項の「学生の街」も同様のことが言えますね)。

 

この場合の分散投資によるリスク回避策としては、全く異なる環境のエリアを選ぶことで効果が得られます。例えば、便利さよりも閑静な落ち着きを暮らしに求める人々が住むエリア、郊外にある住宅街などが想定されます。

 

また、市や区あるいは県単位で思い切って全く違う環境、違うニーズでの投資を行うことも有効です(この場合は、管理面の煩雑さなど別なリスクが生じますが、その点は本稿では検討外とします)。

 

3.時期の分散

投資時期をずらすという意味での分散投資です。例えば、大きな資金をいちどきに高額物件に投資するということは、もしも急に景気低迷が起きたときに大きな損失を被る可能性があります。資金に余裕があったとしても、複数の物件に時期をずらして投資計画を進めることは、リスク回避につながります。

 

市況の変動リスク回避だけでなく、最初の投資で経営ノウハウを積めば、次の投資にそれを生かすことができ、さらに投資効果を高めることが可能です。

 

また、マンションにしても一戸建てにしても、建物には修繕が必要な時期が訪れますが、築年数や過去の修繕履歴を見た上で、それらが重ならないような物件を選んだり、築浅の物件でも購入時期をずらしたりすることで、同時期に修繕費が必要になるというリスクが回避できます。

不動産投資には分散投資が有効

分散投資とは逆に、「集中投資」という手法があります。集中投資は、高い利益を確保できそうな対象に絞って投資をするという、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」な手法です。

 

しかし、不動産投資では多額の資金が動く上、キャピタルゲインを狙う転売の場合でなければ、家賃収入などによる長期的な利益を見込んだ投資になることがほとんどです。そのため集中投資ではなく、できる限りローリスクで安定的にリターンを確保できる分散投資が有効です。

 

高い利益を見込んだ集中投資が悪いわけではありませんが、現物不動産での賃貸経営という形での投資では、リターンとのバランスを考えるとリスクは抑えるべきでしょう。資金の問題もあるので、最初から複数の物件に分散投資をするということは厳しいかもしれません。ただその場合でも、最初の投資で成果が出れば、時期を分散した次の投資が考えられます。

 

ここでは現物不動産についてのみ取り上げましたが、不動産投資信託(REIT)や不動産小口化商品といった商品との分散投資も、一つの検討対象になります。

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