不動産の購入が相続税対策に有効な理由
近年の税制改正により課税の対象となるケースが増えたといわれる相続税は、資産を保有している人にとって重大な関心事になっています。不動産投資はそのような相続税対策は大きなメリットの一つでもあります。以下では、不動産投資がどのように節税に役立つのか、その仕組みを紹介します。
相続税対策の重要性
【相続税の改正で対象者が増加】
相続税の計算をする際、遺産額から基礎控除額を差し引くことができます。この基礎控除額は、従来「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」でしたが、2015年1月から「3,000万円+法定相続人の数× 600万円」と引き下げられました。
つまり、その分相続税の課税対象となる人が多くなります。実際に、2014年までの課税割合は4%台で推移していましたが、2015年は8.0%となりました。
【早めの対策で節税が可能に】
相続税は早めに対策を始めるほど節税の幅が広がります。たとえば、贈与税の暦年課税では年110万円の非課税枠が利用できます。つまり、10年かけて1,100万円の資産を無税で生前贈与し、相続税の対象を減らすことができるのです。これは受贈者一人あたりの金額ですので、もし、二人、三人と贈与すれば、その額は2倍、3倍となります。
節税の仕組み
【不動産に変えることで評価額が下がる】
相続税対策の基本は、対象となる資産の評価を下げることです。相続税の計算は、現預金、有価証券、不動産などの遺産を集計するところから始まります。その際に、それぞれの資産をいくらの金額と考えるかが評価での問題となります。
現預金は額面がそのまま評価額となるので節税の余地がありませんが、有価証券や不動産では評価方法を勘案して節税する余地が生まれます。
【賃貸経営にするメリット】
まず、資産を現預金として保有しているのに比べ、これを不動産に変えて保有するだけで、相続税の評価額は下がります。相続税法上、土地は路線価、建物は固定資産税をもとに評価されるのが基本ですが、それらの価格は実勢価格より低いからです。
また、保有している不動産を賃貸することにより、さらに評価額を下げることができます。土地では、自用地という扱いから貸家建付地という扱いになり、規定の計算方法により評価額が減額されます。建物では、貸家という扱いになり、固定資産税評価額から借家権割合(通常30%)などを加味した計算方法により評価額が減額されます。このため、賃貸経営をすること自体が節税対策になるのです。
小規模宅地等の特例
【小規模宅地等の特例とは何か】
上記のような節税効果のほかにも、「小規模宅地等の特例」を適用することにより、さらなるメリットを享受することができます。小規模宅地等の特例というのは、相続や遺贈により取得した財産で、相続開始の直前において被相続人の事業や居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の面積について相続税の課税価格を減額する制度です。
たとえば、居住用の宅地であれば330平方メートルまで80%減額、事業用の宅地であれば400平方メートルまで80%減額となります。不動産経営の場合は、貸付事業用の宅地として、200平方メートルまで50%減額となります。
【要件は?】
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地の場合、「事業承継要件」として、その宅地を利用した貸付事業が相続税の申告期限までに引き継ぎ行われていること、また「保有継続要件」として、その宅地を相続税の申告期限まで有していることなどが必要とされます。
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地、相続時精算課税を利用して贈与により取得した宅地については、小規模宅地等の特例との併用ができないため、注意が必要です。実際に特例の適用を受ける際には、相続税の申告書に、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付して申告手続をする必要があります。
相続税対策では、そのほかにもさまざまな条件を考慮する必要がありますので、早めに税理士などの専門家に相談することが得策といえるでしょう。
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